アウトソーシングは「儲かる」仕組みづくりだ!part2

ますます注目されるアウトソーシングの新形態

 アウトソーシング、日本語でいうところの業務委託はコース管理部門やレストラン部門といった大きなセクションばかりをいうわけではない。クラブハウスのメンテナンスや警備システムなどを含めると、ほとんどすべてのゴルフ場が既にアウトソーシングを取り入れているといっても過言ではないだろう。そうした中、最近ではプロショップ(ハウス売店)のアウトソーシングが注目されている。
 プロショップのアウトソーシングとは、プロショップのスペースをアウトソースした企業に提供し、そのスペースを使ってアウトソースした企業は自己責任の営業努力によって売り上げを向上させ、予め取り決めた委託料をゴルフ場が得るというスキームである。ここでは、実際にアウトソースする場合の手順、そして金額の取り決め方に関して、プロショップを例にとって見てみることにしよう。
 プロショップに置くゴルフ用品がメーカーや問屋からの「委託商品」(売れた分だけを精算するシステム)であれば、ゴルフ場もそれほどリスクが無かった。しかし、最近のようにそのほとんどの商品が「買い取り商品」となると、ゴルフ場は多大な在庫リスクを抱えることとなるので、仕入れる数は限られる。このため、スケールメリットで勝負できるグループコースであればまだしも、多くのゴルフ場のプロショップが「お荷物」的存在にすらなっているというのが実状だ。中には、「しっかりと利益を出している」というゴルフ場もあるだろうが、実際は人件費をフロント部門と按分しているケースがほとんどである。しかし、プロショップを運営する以上は販売することはもちろん、経理作業や在庫管理も必要だ。デッドストック分の費用なども事細かく計上すればするほど、プロショップ単独で利益を上げることは不可能といえるだろう。
 在庫リスクがあるから仕入れることが出来ない。仕入れることが出来る商品が少ないから売れない。同じように、売れないから専門知識を持ったスタッフを配属できない。専門知識を持ったスタッフがいないから売れないという事実があることも見逃せない。そもそもゴルフ用品、特に高額商品はある程度の知識を持ったスタッフが丁寧に説明するから売れるものであって、そうでなければ売れるわけがない。ましてや、そのほとんどが定価販売となれば、これはもう「仕方なく買う」というネガティブなものでしかなく、CS向上とは無縁の存在といえる。但し、こうした現状を一気に解決できるのが、プロショップのアウトソーシングなのである。
 プロショップのアウトソーシングのメリットは、まずはプロショップに商品が豊富に並び、クラブハウスが一気に華やぐということが挙げられる。これはプロショップをアウトソースした相手先の会社(受託会社)が在庫リスクを抱え、ある程度の商品構成を取り揃えてくれるからである。
 もちろん、人件費を抑えることが可能になるということも、大きなメリットになることは間違いない。プロショップの販売業務は本来ひとりでも可能であるが、実際は休憩などを考慮してローテーションを組むのが普通だ。そのため、複数のスタッフを配置せざるを得なくなっているのが現状である。もちろん、多くのゴルフはプロショップだけのためにスタッフを雇用することはないと思うが、便宜上はこのような管理作業も必要になるのだ。
 一方、アウトソーシングした場合、スタッフのローテーションはあくまでもアウトソースした先の企業が考えることであって、ゴルフ場サイドがスタッフのローテーションを気にすることはなくなる。また、受託した会社もその信用、そして責任から、何か問題があった場合に本社のスタッフがその都度応援に駆けつけてくれるはずである。これも「会社対会社」で契約する、アウトソーシングのメリットといえるのだ。
 プロショップをアウトソースすれば、必ず売上は向上する。何故ならば、「買えるものが増えるから」。答えは簡単だ。但し、委託料が唯一の収入源となるプロショップの表面上の収支自体は、直営の場合と比べて悪化するように映るかも知れない。何故ならば、比較対照となる従前の直営時には「人件費を見ていない場合が多いから」。この答えも簡単である。しかし、ゴルフ場全体からみれば、売上が伸びるということはお客様のニーズにマッチしたと言うことに他ならない。「賑やかになったプロショップは、お洒落なインテリアを買ったのと同じ」と割り切り、それをCSの向上に繋げて来場者を増やす。ゴルフ場である以上、「プレーフィ収入で稼ぐ!」という大原則は、絶対に忘れてはならないのである。

RFPが必須となるアウトソーシング先の選定

 アウトソーシングが注目される大きな理由に、最近特に話題となっている「コンプライアンス」(法令遵守)問題がある。例えば、レストランは品質問題に対してどのような施策をおこなっているのか? また、コース管理は年々厳しくなっている環境問題に対処できるのか? 施設管理で事故が起きた時にはどうなのか? こうした諸問題に、残念ながら単独のゴルフ場が対応するのはまず不可能である。もちろん、アウトソースしたからといってゴルフ場に責任が無くなるわけではないが、リスクが大幅に軽減されることは間違いない。では、こうした諸問題に対して、アウトソース先の企業はどのような考えを持っているのか? そのために重要になるのがRFP(Request For Proposal)と呼ばれる提案書の存在である。
 RFPとは、アウトソーシングする際、そのアウトソース先の企業に対してどのような運営コンセプト、そして運営スタイルで業務をおこなうかを詳細に記してもらうもの。その内容に対して「委託料がいくらになる」といった見積書も、当然ながらこの中に含まれている。以前なら口約束や簡単な業務計画書で済まされていたかも知れないが、後々のトラブルを未然に防ぐためにもRFPの提出は必須だ。また、このRFPをいくつかの企業に提出させることで、同条件での見積比較が可能となる。前提条件が違っていながら、見積金額を比較することほど無駄なことはないのである。
 最近ではRFPのアドバイザリー業務だけのために、中立的立場のコンサルティング会社を導入するケースも増えてきているようだ。では、RFPとは一体どんな提案書なのだろうか? ここでは、レストラン部門を外注する際を例にとって見ることにしよう。

1. 委託開始時期
・*月*日の委託業務開始時期を基にした全体スケジュールについて提案願います。
2. 運営実績に関して
・ゴルフ場レストランの運営実績(受託件数、売上、客単価、委託前後に於ける改善比較実績など)について明記願います。
3. 従業員に関して
・業務委託にあたり、レストラン部門スタッフの転籍についてどのような選考基準、手続きを経ていくかについて明記願います。
・業務受託後の組織図案を明記願います。
4. 営業に関して
・レストランをゴルフ場クラブハウス内で運営していただく前提条件のもと、販売価格などを含めた全体のコンセプト、また、御社を採用した場合のメリットなどを明記願います。
・想定している営業時間を明記願います(例/ゴルフ場の営業時間に合わせる、など)。
・レストラン運営に於いて、イベントやキャンペーンなどの実施予定があれば明記願います。
5. メニュー構成に関して
・朝食時、昼食時、あるいはパーティー時などに提供するメニュー案について、また、メニューの変更頻度について明記願います。
・提供メニュー以外でもお土産物や、地元の特産品、その他お客様のニーズを掘り起こせるような商品構成について実施予定があれば明記願います。
6. 業務範囲に関して
・クラブハウス内レストラン以外、例えばコース内売店、自動販売機の管理なども委託範囲に含む場合、その詳細を明記願います。
・ゴルフ場が業務で利用する場合、あるいは販促品などを注文する場合の詳細(割引率など)について明記願います。
・ゴルフ場の従業員への食事の提供(賄い食の有無や割引率)について明記願います。
7. 緊急時の対応に関して
・食中毒などレストランに於けるトラブルが発生した場合、どの様な対処策をお持ちか明記願います。
8. 委託手数料に関して
・委託形態に基づき、お支払いいただく委託手数料についてご提案願います。
・水道光熱費、食器類、什器類、厨房機器などの購入、修繕等諸経費の費用負担区分について、その詳細を明記願います。
9. その他
・その他特記事項などがあれば明記願います。

 ともすれば大きな手間にもなるRFPであるが、こうした作業に対してどのような対応を取るのかもアウトソース先を選定する大きな要素になる。何度も言うようだが、アウトソーシングのメリットは「会社対会社」の契約であり、ゴルフ場サイドとしては常にきちっとした対応を要求したいものだ。何より、アウトソーシングは委託費用(経費)の削減や委託収入の増加だけを目的としているわけでは無い。あくまでもCSの向上こそが大切なので、どのような運営コンセプト、そして運営スタイルで業務がおこなわれるかが非常に重要な選択基準となるからである。




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