究極の省力化は運営の外注化

究極の省力化は運営の外注化

 今後、益々市場が縮小するゴルフ場業界にあって、確実に利益を確保する。その鍵を握っているのが、適正人員計画であることは間違いない。そして、そのもっとも効果的な施策は、「外注化」といっても過言ではないだろう。

 本来、徹底的に労務コストを削減するためには、すべての部門を自社で運営するのが理想だ。しかし、世界でも類をみない高額な労務費と、労働規則によって雇用が守られている日本に於いて、自社運営によるコスト削減には限界があるのも、また事実である。人件費の削減や正社員の削減に関しては、「サービスの低下を招く」と批判的な考えも多いが、そもそもここまで減少した売り上げ規模のゴルフ場で「総支配人」や「支配人」、「マネージャー」や「チーフ」といった役職者が何人もいるほうが異常であると認識すべきだろう。

 では、外注化はどこまで推し進めれば良いのだろうか? 外注化のもっとも進んだ究極のスタイルは、ゴルフ場を所有する資産会社と実際にオペレーションをおこなう運営会社の分離。つまり、運営そのものの外注化である。

 日本のゴルフ場の多くは、資産会社と運営会社が同じである。中には「便宜上」分けているケースもあるが、それらの実態は、資産を持つ経営会社と実際にゴルフ場を運営する運営会社が表裏一体となっているケースが大半を占める。ここでいう外注先となる運営会社とは、資産会社と資本関係がない、文字通りゴルフ場の運営を専門におこなう委託会社のことを指す。

 日本のゴルフ場の多くは、オーナーすなわち資産会社の代表者の趣味性が色濃く反映されたものとなっており、長い間「経営」といった概念からは大きく逸脱していたのが現状だ。「ステイタス」「グレード」といった亡霊に取り憑かれ、もっとも大切なゴルファーニーズを蔑ろにして収支を悪化させる。その結果が、現在のゴルフ場を取り巻く最悪の状態を生み出した最大の要因であるといっても過言ではない。

 一方、対外的には平穏そうなゴルフ場にも、表面には出ない数多くの問題点が隠されているケースが多い。複雑な許認可や巨額の開発費、法的整理での制約や地権者など地元との関係も蔑ろにすることはできず、それらが健全なゴルフ場運営の邪魔をすることも少なくない。そこで、こうしたゴルフ場の「負」の部分が運営の足枷にならないように、資産会社と運営会社を分離するスキームづくりが重要となる。? 

 資産会社はあくまでもゴルフ場の資産を保有する会社で、固定資産税や地代賃料などの保有コストだけを負担する一方、運営会社に対する防波堤の役目を担う。また、運営会社は経営上の制約を受けることなく、あくまでも収益性を追求したオペレーションの実現をめざし、資産会社に対しては保有コストの確保、そして対外的な評価が高まることによる資産価値の向上をもって応える。これが、理想的なスキームなのである。

 実はこのスキームが確立できれば日々の営業に専念することができ、効率性の高い運営が実現する。運営に専念すれば良い運営会社は、とにかく効率の良いオペレーションだけを心掛けていれば良く、そのため更に徹底的なアウトソーシング化を図ることもできるからだ。

 本来、ゴルフ場の経営や運営は、経済合理性だけでは語ることはできない。しかし、ここまで市場が縮小して、更に、今後も好転する道筋が見いだせない状況下に於いて、ゴルフ場がもっとも優先すべきことは、「環境に適応して、生き残ること」であり、言い換えるなら、「とにかく存続して、ゴルフを楽しんでもらうこと」なのではないか。少なくとも、ゴルフという素晴らしいスポーツは、その価値が十分にあるのだから。



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