アウトソーシングでゴルフ場はこう変わる!

アウトソーシングでゴルフ場はこう変わる!Part1

アウトソーシングはゴルフ場の救世主か?

  今や、アウトソーシングは特別なことではない。レストランやコース管理はもちろんのこと、施設の保守点検やセキュリティ業務などを含めれば、ほとんどのゴルフ場で何らかのアウトソースしているのが現状だ。
  では、アウトソースをすれば、ゴルフ場の収支は改善するのだろうか?
  第一に、コストのことだけを考えれば、すべてを直営、つまりアウトソースしない方がメリットのあるケースが多い。何故ならば、アウトソースした先、つまり委託を受けた会社も企業である以上は、当然ながらそれなりに利益を出さなければならないからである。そのためコストだけを見た場合、直営で賄うよりも、アウトソースすることで逆に高くなってしまうケースも少なくはないのである。
  もちろん、過剰なサービスと重たい人件費で利益を出せずにいるレストランや、コスト意識がないコース管理、ハウスメンテナンスなど、収支の改善を目的としてアウトソースするケースも多いことは確かだ。特にハウスメンテナンスの保守営繕・管理といった業務は、本来ひとりでも可能であるはずが、休暇などを考慮してローテーションを組むことにより、いたずらにスタッフの数を増やしているケースが多い。このようなゴルフ場は、明らかにアウトソースした方がコストを削減できるだろう。
  しかし、アウトソースするのは、こうしたコスト削減ばかりの問題ではない。では一体、アウトソーシングする本当のメリットは何なのだろうか?
  ゴルフ場の運営は本来、お客様に100%対峙していなければならない。格式高いメンバーコースであろうと、敷居の低いパブリックコースであろうと、それは皆同じはずである。どのようなサービスをしたら喜んでいただけるか? どのような施策をすれば集客できるか? そして、コースコンディションの向上やラウンド時間の短縮など、サービス業として「顧客満足度」を高め、ゴルフ場全体の評価を上げ、そして収益を得ることでゴルフ場事業が成り立っているという大原則を忘れてはならないのである。
  しかし、実際のゴルフ場の現場はどうだろうか? お客様と向き合うどころか、社内業務や社内調整などといった生産性のない仕事に、大半の時間を費やしているスタッフが多いというのが現実なのである。
  経費削減が叫ばれる中、特にマネージャークラスのスタッフに要求される業務は激変した。コストの見直しやローテーションの調整などはもちろん、以前なら作ったことはもちろん、見たこともない部門別の予算をパソコンのマニュアル片手に作成。おまけに、誰々が無断欠勤をしたとか、誰と誰の仲が悪いなど、生産性のない雑用が追い打ちを掛ける。しかし、これは直営で賄っている以上、特に、スタッフの数が明らかに減った現在に於いては、決して避けて通れない道。このような状況下で、「お客様に100%対峙して」という方が、所詮は無理な話しだ。
  そこで、アウトソーシングが、俄然脚光を浴びるのである。

アウトソーシングの本当のメリットは?

  レストランやコース管理、施設管理といった部門をアウトソースしてコスト管理や労務管理から開放する。その一方で、フロントとマスター室だけを直営として残し、集客とラウンド管理に特化させる。これが最も効率的なアウトソーシングのスタイルだ。
  スタッフの数は圧倒的に少なくなるが、その全員が「どうしたら集客できるか?」、そして「どのようにすればスムースにラウンドできるか?」を、文字通り朝から晩まで考える。生産性のない労務管理などは、ここでは一切無縁なのである。
  あるコースをコンサルティングした際に、フロントとマスター室だけは直営で、スタッフが約15名。その他はすべてアウトソースというゴルフ場にした。このゴルフ場の支配人は弊社のスタッフ。つまり、支配人までもアウトソースである。
  しかし、僅か15名ほど、しかもアルバイトのスタッフが大半であるものの、その全員が煩雑な社内業務をすることなく、お客様だけを向いて日夜大奮闘。結果、大変な集客を記録し、想像を超えた収益を上げたケースがある。
  考えてみれば、スタッフが社内業務や社内調整に追われてお客様が二の次になっているゴルフ場と、スタッフのすべてが100%お客様に向いているゴルフ場では、はじめから勝負にはなっていないのだ。
  もちろん、アウトソースしても、人間関係に問題が起きることはある。しかし、アウトソースは、あくまでも会社(ゴルフ場)対会社(委託先)との契約が基本だ。このため、何か不都合があった場合でも、現場にいる委託先のスタッフではなく、その会社の担当者と話せば良い。これなら、現場の人間関係がギクシャクすることも少ない。
  極端にいえば、問題のあるスタッフがいれば、アウトソース先にそのスタッフを変えてもらう。更には、それでも誠意ある対応がなければ、その会社との契約を終わらせれば良いのだ。
  しかし、一旦会社で雇用、しかも正社員として雇用でもすれば、あとは我慢して使用しなければならないという不条理が待っている。
  これが、バブル期のように大勢のスタッフを抱えていればまだ良い。ひとりくらい問題のあるスタッフに目をつぶっても、ゴルフ場は他のスタッフがカバーしてまわっていただろう。しかし、一人当たりの仕事量が格段に増えた現在では、無駄な一人を雇っている余裕はない。ゴルフ場、そしてまわりのスタッフもいい迷惑だ。
  もちろん、アウトソースなどせず、既存のスタッフ全員が100%お客様に対峙できれば、これほど頼もしいことはないだろう。しかし、残念ながらゴルフ場は、そんな優秀なスタッフを50人、ましてや100人も雇う事業規模ではない。これも事実なのである。
  また、大勢のスタッフを抱えた場合、その将来性も不安となる。優秀なスタッフが仮に何人も育ったとしても、そのスタッフ全員に十分なギャランティを支払えるような収益を上げることは難しい。そんな現実がありながら、「本人のために」といって既存の雇用形態にこだわり、アウトソースを避けているのであれば、まさに贔屓のひき倒し。偽善者に他ならない。
  このように、労務管理から開放され、すべての業務をお客様に注力できるアウトソーシングは、一時的にはコスト高になったとしても、それを上回る集客という面で大きなメリットがある。アウトソーシングと聞くと「合理化のための苦肉の策」、ひいては「事業の縮小」といったイメージがあるが、必ずしもそうではなく、攻撃的な施策でもあるのだ。

システムの再構築をアウトソーシングで実現

  収益を改善するために、取り敢えずコストの削減をする。例えば、とにかくスタッフの数を減らす。そんなゴルフ場を数多く見受けるが、果たして本当にそれで問題解決となるのだろうか? 
  システムの再構築。ゴルフ場の収益を高めるためには、まずはシステムの再構築が必要だ。例えば、乱暴にスタッフの数を削減したというレストラン。人数が削減できないから、肥料を大幅に削減したというコース管理。これでは単にサービスが低下するだけで、他コースとの差別化などはかれるはずもない。差別化がはかれないゴルフ場は、たとえコストを削減できたとして、それ以上に来場者が減り売上げが減少することは目に見えているのである。
  大切なのは、それまでのシステムをまずは変えてしまうこと。システムを変えた上で、新しい施策を取り入れれば、サービスの低下は最小限に抑えられるばかりか、それまで以上のサービスを提供することだって可能になるのだ。
  たとえば、キャディ付きが原則のゴルフ場が、時代の流れだからといってセルフプレーも取り入れ、キャディ付きとセルフプレーの選択制としたらどうなるのか? すぐに選択制を導入したことは間違いではないと感じることだろう。何故なら、多くのゴルファーがセルフプレーを望むからである。しかし、その結果、それまでいたキャディの多くは、ラウンドする機会が激減するに違いない。
  ラウンドが減っても、それに比例して給与コストが下がる。このようなシステムになっていれば、決して慌てることはないだろう。むしろ、セルフ化したことによってゴルファーニーズを吸収できたという、メリットばかりであるに違いない。しかし、現実はどうだろうか? 
  キャディフィ収入が激減する一方、それまでのキャディに関わる労務コストは微減。キャディを抱えているゴルフ場は、大なり小なりこのような収支バランスになるのが普通だ。それまでいたキャディの給与体系を、ラウンドしてはじめてフィが派生する「完全ラウンド給」にするという、システムの再構築も必要なのだが、実際はそう簡単に給与体系を変えることはできない。仮にキャディの数を大胆に削減できたとしても、いざという時にキャディが不足して、ますますキャディ離れが加速するであろう。もっとも、多くのゴルフ場はキャディを削減したくとも、キャディの抵抗にあって実行できずにいるのだが…。
  それはさておき、キャディの数が減ったゴルフ場にとって、キャディ部門のアウトソースは非常に便利な存在となる。
  キャディをアウトソースし、派遣会社から来るキャディ。その多くは20才代である。中には高校を卒業したばかりの、10才代というケースであることも少なくない。こうした若くて元気なキャディを予め準備しておけば、キャディ付きのニーズがある日はもちろんのこと、ラウンドに付かない日はコース管理やマスター室業務、時にはフロントやレストラン業務の応援までカバーできるのである。
  派遣キャディは自前のキャディよりも割高であるのが普通であるし、従来からいるキャディの反発を買うケースも少なくない。しかし、利便性の高い派遣キャディがいることでキャディ付きというラウンド形態が維持できるのであれば、それが差別化になって集客できるばかりか、結果的にはそれまでいたキャディの雇用すらも確保できるわけである。
  こう考えると、既存のキャディ全員を派遣会社に転籍させ、マスター室全体をアウトソースするという方法が、これからのトレンドになるのかも知れない。

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