省力化・合理化が進んだゴルフ場

〜プロが打つ「次の一手」はこれだ!〜part1

今や、すべてのゴルフ場が何らかの合理化や省力化をおこなっているといっても過言ではない。しかし、合理化や省力化によってサービスの低下には陥っていないか? そして、それが理由でゴルファーの足を遠のけてはいないか? 単なる「経費の削減」に終始しないこれからのオペレーションと次のステップへ進む新しいキーワードを、気鋭のゴルフ場コンサルタント、エナジーの菊地英樹氏が解説する。

単なる経費の削減ではない、これからの省力化と合理化

 ゴルフ場の省力化、そして合理化を、単なる「経費削減の手段」だと勘違いしてはいないだろうか? 省力化や合理化の目的には、如何に「手間を省いて」「合理的に集客する」といった大切な要素があることを忘れてはいけない。
 人気のあるゴルフ場(結果的に集客が多くなる)になるためには、ゴルフ場の個性を活かした「コンセプト」と、それを具現化した「オペレーション」が必要不可欠だ。ゴルフ場の個性を際立たせた商品企画が必要で、それが具現化できてはじめて収益改善がはかれるようになる。
 ゴルフ業界では昨今、経費の削減から省力化、そして合理化が声高に謳われているが、ただ単に省力化をして「料金を安くすれば良い」といったものではない。例えば、省力化によってプレー料金を安くして、スタッフの数を単純に削減したコース。当然ながらあらゆる部分に無理が出てサービスの低下を招き、ゴルファーから見ればただ単に「サービスの悪いゴルフ場」にしか見えなくなる。
 確かにプレー料金の安さも商品力としては有効であり、「差別化」のひとつであることは間違いない。しかし、「安さ」でしか差別化ができないコースは、残念ながら常に他コースの料金によって入場者数が左右される結果となるだけだ。他の商品力を兼ね備えたコースが値下げした瞬間、「安さ」だけが魅力のコースはゴルファーの選択肢から見事に外れることとなる。
 そこで大切なのが、省力化してもサービスの質を落とさないよう、これまでの構造やシステムそのものを最初に、そして根本的に変えてしまうことである。最新型のモニター付きのGPSナビゲーションシステムを導入すればコースの案内はもちろん、安全対策やスロープレー対策も万全となる。同じようにチェックインカードや自動精算機を導入すれば、フロント業務は大幅に軽減され、サービスは低下するどころか逆に向上するだろう。また、最先端の基幹システムを活用しゴルフ場の運営に関わるあらゆる要素を一元管理することで、はじめてそれまでの運営スタイルを根本的に変えることが可能となり、スタッフの作業は大幅に軽減される。
 このような施策により雑務から解放されたゴルフ場のスタッフは、新たな「スタッフによる人的サービス」という商品力を「差別化」にしてお客様のハートを掴み、更に基幹システムを活用してお客様の「囲い込み」が実践できるようになる。これこそがまさに、「勝ち組スパイラル」「勝利の方程式」なのである。

合理的な集客に欠かせない、実勢価格に則した適正プライス

 手間を省いて、合理的に集客するにはどうしたら良いのか? そのために最も大切なのはプレー料金の値段決め、つまり「プライシング」である。
 多くのゴルフ場がパンフレットやホームページに掲載されている、俗にいうところの「定価」と、実際の来場者がゴルフ場に支払うプレーフィ、いわゆる「実勢価格」との間に開きがあり、この価格差は、高級コースになればなるほど大きくなる傾向にある。では、どうしてこのような事態になってしまうのか?
 こうしたゴルフ場は一見すると強気に見える割高な定価を設定し、それに対して様々な割引料金を提示するという、二重価格体制で営業されている。このような営業施策は一見すると「お得感」を高めて集客しているように思われるが、実際は非常に非効率であり、間違っても「合理的な集客」とはいえない。なぜなら、割引料金に「お得感」を与えようとすればするほど、基準となる定価を無駄とは知りながらもまずは浸透させなければならず、それにプラスしてあらためて割引料金を浸透させるという、まさに二重の労力が必要となるからである(多くのゴルフ場では営業マンの人件費も含まれる)。しかも、実勢価格を生み出している「安い料金」を知っているのはごく一部の限られたゴルファーであるため、実際には来場者総数全体を底上げできるような数にはならないというのが現実だ。
 こうした営業施策はそもそもの定価自体が機能しなくなるばかりか、最後には割引価格の設定にも整合性が取れなくなるから要注意。ゴルファーから見ると「結局いくら安くなっているのか?」「本当にお得なのだろうか?」といった不安感を募らせる結果となり、それが理由で結局はゴルファーの足を遠のけてしまうのである。
 あらかじめ安い実勢価格を知っていれば来たはずのゴルファーを取り込めず、高い表示価格で来ているゴルファーには安い料金の存在により不信感を与える。「価格が不透明」「だから来ない」「来ないから割引」。その結果、「安い料金で少ないゴルファーしか集客できない」という悪循環に陥っているのが、まさに非効率なゴルフ場の典型というわけである。
 こうした状況を打破するためには、あらかじめ「実績価格」に則したプライシングが重要となる。「そんなことをしたら、割り引くことで来ていただいたゴルファーに逃げられる」「その料金から更に割り引かなければ来てくれない」という声がすかさず聞こえてきそうだが、それで結構。割り引かなければ来ないのであれば、無理に追いかける必要などない。なぜなら、その代わりにあらかじめ実勢価格に則した安い料金提示でヒットした、今までにないゴルファーが新たなターゲットになるからである。
 余談ではあるが実勢価格を定価し、それ以上の値引きをしない営業施策により集客すると、以前より消費単価が増加するケースも珍しくはない。客単価を上げる最大の施策はプレー料金を上げることではなく、プレー料金を割り引かないこと。とにかく、それに尽きるのだ。
 今や、集客を伸ばしているゴルフ場に共通していえるキーワードは、「シンプルな価格設定」といっても過言ではない。実勢価格に則した公正明瞭な料金設定こそ、営業面に於ける省力化、そして合理化の第一歩というわけである。

次項へ  

このページトップへ